My Sweet Melody

常に何かしらのおたくをしているわたしの話

ペール・ギュント@KAAT 神奈川芸術劇場 7月20日(千秋楽公演) 観劇メモ

ペール・ギュント神奈川千秋楽おめでとうございます! 初日よりもメリハリのある表現になっていて、客席の反応を受けられる程に余裕が出ていました。 ステージの上に乗った内博貴という俳優を甘やかさず、殺さず、最大限その魅力を発揮できるよう引き出した白井晃さんの演出素晴らしかったです。

『ペール・ギュント』|KAAT 神奈川芸術劇場

これ以降は公演内容や演出等について詳細に記載していますので、ネタバレが嫌な方はご覧にならないでください。

第一幕 ストーリー

少しずつステージのあちこちに増えていく演者たちのなかに内博貴もいます。 生まれたばかりの赤ちゃんが出てくるのですが、この赤ちゃんがペールのような、そうでないような…誰なのかは語られないです。 ペールはこの赤ちゃんが入れられた保育器を見つめて、何も言わないまでも、ここからステージが始まることを印象付けていました。 ステージ中央に母オーセ役の前田美波里さんとペールがスタンバイして、パッとライトが当たった時の輝き方がすごかった。 ペールの無邪気で子供らしい表情の内博貴はまぶしくてキラキラして見えます。 近い距離で見ているとその顔立ちの美しさに吸い込まれそうになる…! 結婚を祝う宴のシーンで除け者にされ、ステージ中央奥の壁にもたれて拗ねるペールの静かなオーラもすごかった。 同じシーンでは、加藤和樹さん演じる鍛冶屋のアスラックの挑発に乗って酒を浴びるように飲むペールが見られます。 ペールには父親譲りの酒癖の悪さがあることを示すとともに、内博貴の過去もふと頭を過ぎったシーンでした。 初日より大げさに笑えるように変えてあるなと思ったのは、花嫁のイングリと熱く愛し合って、薄いビニールシートで出来たシーツから出てきたペールはズボンが膝まで脱げていたところ。 今まで男女が愛し合っていたばかりという生々しさも、少年がヤンチャしていたらうっかりズボンが落ちてしまったかのような無邪気さも、両方矛盾せずに存在していたのがおかしかったです。 それは他のシーンでも感じました。 トロルに会う前に、服をたくし上げたり、豊かな肉体を強調するポーズを取ったりする山の女たちに、逐一、鼻の下を伸ばして誘われるがまま、それぞれの女に引き寄せられるのが笑えるくらいわかりやすいポーズでした。 初日では山の女たちの誘いに少し戸惑いながらベッドになだれ込んでいましたが、千秋楽には「何人でも抱いてやる!」と言わんばかりの豪快さでベッドに飛び込んでました。 群がる女たちを跳ね飛ばしてベッドから起き上がる時にどこか遠慮がある感じなのが、内博貴らしいなと思いました。 他にもトロルとのシーンでは、三上市朗さん演じるドブレ王に挨拶する前にトロルの王女と身支度整えたり、トロルたちが踊っているのを馬鹿にして、それをトロルの王女に指摘されると即座に手のひらを返したり、ということもありました。 ここでドブレ王からトロルの教え「自分らしさに満足しない、あるがままに生きる」は後半のボタンにされるシーンで出てくるのですが、この時点ではあっさりした言い方でした。 俺は俺自身と名乗る自分と対峙するシーンでも、ボタンにされるシーンで再度出てくる「自分のしたこと(罪)からは逃れられない」というのが出てきます。 まっさらに新しい自分を作り出したり、取り入れたりしても、そこまでに自分がしてきたことが良くも悪くも自分を作る。 その呪縛からは逃れられない、ということが出てきます。 このシーンではちょっとしたアクションというか、身のこなしを要求されます。 しゃがみこみながらターンする身のこなしが軽やかでさすがジャニーズ!と思ってしまいます。 第一幕のクライマックスであるオーセを看取るシーンでは、その前段にあるオーセと村の女性のシーンが効いています。 前段のシーンではペールが小さい頃の思い出の品を振り返り、村の女性がその品をゴミ扱いし、さらにペールを貶すのですが、オーセは猛反発します。 直前までオーセ自身がペールのことを嘆いていたにも関わらず、です。 この手のひら返しぶりがまさに親子だなぁと思うし、母が我が子のことを悪く言っても他人からは言われたくないという心情なのかなとも思います。 このシーンが入ることにより、ペールがホラ吹きで女性にだらしなくヤンチャなだけではない気持ちになっていきます。 ペールがオーセとソールヴェイから深い愛情を注がれる理由を観客が理解していくのには重要なシーンです。 前段のシーンを踏まえて、子どもの頃よくオーセがペールにしたというお話の読み聞かせを、今度はペールがオーセにします。 まるで子どもの頃に戻ったかのような無邪気さで御者になりきり、馬車を走らせてパーティ会場に向かいます。 ペールが物語を進めれば、オーセが答えるのですが、徐々に声が小さくなり、最後に「少し横になっているよ、会場に着いたら教えておくれ」と言って目を閉じます。 それがオーセの最後の言葉になります。 単純な話ですが、死への旅立ちとパーティ会場へ馬車で向かうのは重ね合わせて受け取っていいのかなと思います。 過分ながら馬車でパーティに向かう物語で想像できるのがシンデレラしかありませんが、子ども向けの物語には似たような物語が他にもあるんだろうと思います。 ペールはオーセの亡骸に縋り付いて号泣します。 本当に大粒の涙を流して泣くので、立ち上がって旅立つことを宣言するペールの目元や頰は涙に濡れて、スポットライトの光でまばゆいばかりに輝きます。 あまりの美しさと神々しさに双眼鏡越しでも後ろに下がりそうになりました。

幕間

下手の柱は切れ目から天井へ吸い込まれる形で回収されていました。 舞台袖から小さい台車に乗せられて倒れた状態の柱が出てきて、ちょうど初めてが折れて倒れたようにセッティングされていました。 しかもこの折れた柱は2つの部分に分かれていて、長い方は預言者のシーンで盗まれてきた財宝を置いたり、船のシーンで船の甲板になったりしていて、短い方は途中まで長い方と同じ役割を果たしつつ、ボタン職人のシーンで老いたソールヴェイが座る椅子になっていました。

第二幕 ストーリー

第二幕が始まると生バンドの皆さんがアロハシャツのような格好にチェンジしている! 第一幕は手術着だったはずなので、舞台装置に合わせて変えていているんですね。 どのシーンだったかちょっと記憶にないんですが、演者から問いかけられてピアノの方の反応を待つコミカルな場面がありました。 「▲▲なの?」→無反応、というやりとりを繰り返していてシュールな雰囲気がまた笑えました。 次に、内博貴自身がJohnney's webでの連載でも触れていた預言者のシーン。 預言者ペールに心酔している女性信者アニトラが心酔した反応で「あぁ〜ん」と喘ぐのですが、濁点が付きそうなほど濁っていて大げさで思わず笑ってしまいます。 客席が笑っているのはもちろん、内博貴自身も笑ってしまってセリフが震えてますw そこに客席はさらに笑いを誘われます。 この辺りは演者にも余裕があって、すごいなと感じる次第です。 また、船乗って故郷に帰るシーンから老いたペールを演じる内博貴ですが、すごく上手くて、見ていると内博貴が続けて演じているのか一瞬わからなくなります。 口調の勢いの良さやホラ吹き加減でちゃんとペールだとわかるんだけど、歳をとったこともわかる動きになっています。

カーテンコール

初日同様に声を出さずに「ありがとうございました」と挨拶していました。 舞台上から白井晃さんを呼ぶと、客席からわさわさやってくる白井さん。 舞台に上がれるか、ちょっと心配そうに見守る内博貴w サッと舞台に上がった白井さんは「ありがとうございました」以外に何も話してくれなくて、演出してみてどうかとか、千秋楽おめでとうございますとか、何か話してくれるかと思いきや、「ありがとうございました」しか言わないww ズッコケる会場の雰囲気を察して、内博貴から「神奈川公演も無事千秋楽を迎えることができました。ありがとうございます!まだ兵庫の公演もいくつかありますので、引き続きがんばりますので、よろしくお願いします」と挨拶がありました。 やりきった実感が出てきたのか、舞台袖に戻りながらキャストの方と肩を組み、噛み締めるようなガッツポーズをしていたのが印象的でした。